今日6月15日は「偶数月の15日」ですので、年金受給日ですね。私が年金を受け取れるのは10年後のことですのでまだまだ先のことです。支給開始年齢がさらに2~3年後になるとのウワサも聞こえてきますので、10年後から受け取れるかどうかは微妙です。
銀行に勤めていた際、「年金受取口座」のノルマには非常に苦しめられました。半期に10件ほどの「年金受取口座」を獲得しなければなりません。偶々自分の担当地域で新たに年金受給年齢に到達して、何もしなくても勝手に「年金受取口座」に指定してくれることが半期に1件あったりしますが、そんな幸運は滅多にありません。
既存の顧客本人だけでなくその家族や取引先企業の役職員やその親兄弟、知人など、幅広く年金受給年齢に達している方を探し、自分の勤める銀行での「年金受取」をお願いするしかありません。
年金受給をされている方は当然高齢の方ですので、一日中家の中にいるか、せいぜい自宅のすぐ近くでゲートボールをしたり、病院の待合室で親しい年寄仲間と雑談に興じる程度で、行動範囲はかなり狭まりますのでわざわざ遠くにある銀行で年金受給をしようとは考えないと思います。自宅に近い農協で年金を受け取るケースが最も多く見られました。
こうした事情から、年金受取口座のノルマは預金獲得などののノルマに比べて非常に困難だったと記憶しています。私などはどうやっても目標未達に終わり、上司や先輩から罵声を浴びせられたり、顧客管理ファイルを顔面に投げつけられることになるわけです。
預金獲得ノルマなどはまずまずの成果を上げていた私ですが、「年金受取口座」の獲得ノルマは全くの不発で、猛烈な苦手意識がありました。
そこで、とある先輩職員が「年金受取口座」獲得の秘策を教えてくれたのですが、私にはどうしてもできない手法だったので、実行には移せませんでした。
秘策とは以下のことでした。先輩職員と私(ダメ人間)の対話です。
先輩「農協とか信用金庫で年金を受け取っている年寄の家に行くんだよ。
なるべく身体の弱った寝たきり老人が一番やりやすいかな。しかも
家族が全員勤めに出かけ、年寄だけしかいなくなればもう年金受取
口座はもらったようなものだな。」
ダメ「はぁ・・・」
先輩「そこで、年金受取口座をウチの銀行に替えてくれるよう頼むんだけ
ど、そう簡単に替えてはくれない。そこで、年寄にはウチの銀行に
替えてくれるまでは帰らない! と宣言していつまでもその場に居
座るんだよ。1時間でも、2時間でも。それでもダメなら1日でも
粘るんだ。そうすれば身体の弱い年寄は必ず根負けする。」
ダメ「え、でも、それはちょっと・・・」
先輩「それくらいやらなきゃダメだよ。相手のことなど考える必要なんか
無い。オレたちはどんなことをしてでもノルマは達成しなきゃなら
ないんだ。」
ダメ「・・・。いや、ちょっと驚いてしまって・・・。自分には無理です
ね・・・。」
先輩「これくらいのことができないのか・・・。」
といったことがあり、今でも「年金」と聞きますとこの場面を思い出します。「それくらいやらなきゃダメだよ」という一言は、日大アメフト部の内田監督(当時)が、宮川選手に危険なタックルをするように迫った際の一言に似ているようにも思います。
私は「ノルマ未達」で殴られたり蹴られたり、ファイルを投げつけられたりしても、かの先輩職員がやっているような蛮行に賛成はできませんでした。
勤め先の銀行は後に経営破綻してしまいますが、仮に破綻せずに継続していても、こうしたことに抵抗感を示す私などは銀行職員として大成はできなかっただろうと考えます。