勤め先の会社では、主に原材料や資材の調達を担当していますが、一部の部品類(パッキンやアンカーボルト、塗料など)の引き合いがあった際には、その販売物品を梱包発送する役割も兼ねています。
お客さまから、営業担当者を通じて、商品を発送した際の宅急便、宅配便の送り状の写しを要求されることがあります。送り状の番号から荷物の追跡ができますので、これは妥当な要求だと思います。
ただ、それだけでは満足せず、商品を発送した私に対し、営業担当者から「荷物は明日絶対に到着する」と言質を取りたがるのは困ります。ベテランの営業担当ほど、「明日絶対に届く」と確約させたがります。
それに対して、私は「絶対に明日到着する」とは答えません。何が起こるか判らないのですから、簡単に「絶対届く」などと答えるのは危険だと思うからです。ところが営業担当者はそれが不満なんです。
その様子を再現してみます・・・・
営業担当者のT氏から内線電話が入ります
T 氏「もしもし、〇〇設備さんへのアンカーボルト8本、送っていただけました?」
わたし「はい、先ほど佐川急便の方に引き渡しました」
T 氏「〇〇設備さんは新潟市ですから、明日届きますよね」
わたし「佐川急便のホームページでは、翌日届くことになっています」
T 氏「では、〇〇設備の△△さんには、明日絶対に届きます!と連絡します」
わたし「あ、明日届くとは思いますが、明日絶対に届く!とお客さまに確約するの
は危険だと思います」
T 氏「え? どうしてダメなの? 明日到着するんでしょ?」
わたし「特に何事も無ければあす届くと思いますが、すでに荷物を佐川急便に引き
渡していますので、佐川急便が確実にお客さまに届けてくれるよう見守る
ことしかできません。明日絶対に届きます、と私は断言はできないんです」
T 氏「明後日は朝からアンカーボルト埋設するので、お客さまは明日中にどうし
てもアンカーボルトが必要なんだ」
わたし「ほぼ間違いなく明日届くと思います。ですが、Tさんがお客さまに対して
明日絶対に届くことを約束すると、何らかのトラブルで明日届かなかった
場合、私たちの会社が責任を負うことになってしまうかもしれません」
T 氏「何らかのトラブルって何だ?」
わたし「荷物輸送中の交通事故、車両火災、大渋滞、ドライバーの重大な道路交通
法違反、突然の降雪や大雨や落雷、台風、竜巻、大地震、戦争や紛争の勃
発、それに荷物まるごと盗難に遭うことも考えておかなければなりません。
私たちは郵便や宅急便、宅配便が翌日届くことが当たり前と思っています
が、幸運なことにこのようなトラブルが生じなかったために翌日配達がで
きただけなんです」
T 氏「ただ、お客さんは、明日必ず届きます!という力強い一言を求めているん
だよな」
わたし「ですので、先ほど申しましたように、荷物輸送中の交通事故、車両火災、
大渋滞、ドライバーの重大な道路交通法違反、突然の降雪や大雨や落雷、
台風、竜巻、大地震、戦争や紛争の勃発、それに荷物まるごと盗難に遭う
トラブルなどが無ければほぼ間違いなく明日届きます、と答えれば十分誠
実な答えですし、ウチの会社が責任を負わされることも無いと思います」
T 氏「このような説明をするとどう違うの?」
わたし「無条件に明日絶対届きます!と約束をしますと、商品をお客さまに明日中
に届ける責任がウチの会社に生じます。仮に高速道路上で玉突き衝突事故
が発生し、佐川急便の車両もその事故に巻き込まれて動けなくなった場合
には、トラブル発生の可能性を示唆していなければ、Tさんや私が玉突き
衝突事故の現場まで行ってアンカーボルトを取り戻して、〇〇設備に届け
ることなるかもしれません」
T 氏「簡単に絶対に明日届きます!なんて言っちゃいけないんだなぁ・・・」
わたし「十分説明しておけば、どうにもならない自然災害や、佐川急便に責任があ
るようなことにまで、ウチの会社が振り回されることにはならないと思い
ます」
こんな説明をしていましたら、あっという間に30分も経っていました。このT氏は比較的物分かりが良いので助かりましたが、どうにも納得しない人もいますし、私を「理屈っぽいイヤなヤツ」と毛嫌いする人もいます。それでもこうしたリスクを削減するために今後も必要な説得を続けます。