「鳩5銭錫貨」は昭和20年(終戦後)と昭和21年の2年間発行された硬貨で、9月28日の記事で紹介しました「稲10銭アルミ貨」と同時期に発行されました。10銭硬貨は材質がアルミニウムでしたが、こちらの5銭の材質は戦時中と同じく錫が使われています。
仮に5銭硬貨をアルミニウムで製作しますと、5銭という額面価格がアルミの材料価格を下回ってしまうんです。そのため、5銭硬貨の材質は戦時中と同様で錫を使っています。
↓ 昭和20年と21年の2種類があります。昭和20年のほうがやや少ないようです
直径17ミリで、現在使われている1円アルミ貨の直径20ミリより一回り小さいです。しかし重さは2グラムありますので、1円アルミ貨(1グラム)の倍の重さです。
↓ 10枚×10列×10段=1000枚を並べてみます
↓ 近づいて撮影します。
錫の鈍い色合いや光沢に美しさを感じ取れる方は、素晴らしい感性の持ち主ですね。
↓ さらに近づきます。GHQの指示なのか、平和の象徴である鳩の図案を採用
↓ 規則正しく並んだ「鳩5銭錫貨」をぐしゃぐしゃに崩します
↓ 近づいて撮影します
↓ さらに近づきます。「稲10銭アルミ貨」と同様「日本国」ではなく「日本政府」
この硬貨も、戦後の急激なインフレの中で、使われる機会が失われてしまいました。
熱に弱く(融点約232℃)軟らかい性質を持つ錫は硬貨の素材としては相応しくはないと思いますが、銀も銅もニッケルもアルミも枯渇してしまったため、錫を使わざるを得なかったのだと思います。
また、力のある方ですと、この硬貨を指で曲げることができるため、20~30個に1つは曲げられた形跡があります。