10月2日以来、2週間振りの古銭の紹介です。終戦間際に発行された「1銭錫貨」は実際に発行されたものとしては最後の額面1銭の通貨です。
戦況の悪化に伴い、日本には銀も銅もニッケルもアルミニウムも無くなってしまい、硬貨の材料が見当たらなくなった終戦間際、当時の日本の支配下にあった東南アジアで比較的豊富に産出されていた錫が硬貨の材料に採用されました。しかしながら錫は金属の中でも軟らかく、融点も低いので、硬貨の材料に適していません。
ですが、ほかに金属は見当たらないため、苦し紛れに錫を材料とした硬貨が発行されました。この「1銭錫貨」の品位は錫50%、亜鉛50%です。
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もしも戦争が昭和20年で終わらず、さらに長期化し、いよいよ錫も使い尽くしてしまったら、硬貨は金属を諦めて、粘土でつくった陶器、いわゆる瀬戸物の硬貨になるところでした。
実際に昭和20年には10銭と5銭は「陶貨」の試鋳が行われ、1銭の「陶貨」はかなり大量に造られており、発行される寸前にまで至りましたが、その直前に終戦を迎え、実際に「陶貨」が市中に出回ることはありませんでした。造られた「陶貨」はほぼ全て破砕処理されましたが、一部は破砕を免れており、現在では古銭マニアの手許に保管されています。私の手許にも「1銭陶貨」が2個だけあります。
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話題が横道に逸れました。「1銭錫貨」は直径15mmと小さいので、10枚ずつ並べる作業がやりづらかったです。
↓ 1銭錫貨の直径は15mm。1円硬貨よりかなり小さいです。
昭和19年と昭和20年があります。
↓ 1500枚を10枚×15列×10段に並べてみました
↓ 近づいて撮影します
↓ さらに近づいてみます。シンプルなデザイン。戦況悪化で余裕が無かったんですね
↓ もっと近づいて撮影します。錫とか鉛は金属の中でも独特の色合いです
↓ 1500枚の列を崩します。
↓ これも近づいて撮影します
↓ さらに近づいて撮影。傷みの激しい硬貨が目立ちます
終戦の前後に錫貨は数種類発行されていますが、古銭マニアの間でもイマイチ人気がありません。しかし、戦況悪化を示す歴史的資料として存在感を発揮しているといつも思います。